知財調停の活用

こんにちは、フリーランス弁護士です。

 

令和元年10月から知財調停手続が導入されました(いまさらですが)。

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/l3/Vcms3_00000618.html

 

これは、知的財産権の紛争に関する調停手続で、柔軟な解決を図ることを目的としています。

調停手続では、当事者の話し合いを中心として裁判官や調停委員が関与し紛争の解決を目指していきます。その中で、各当事者が証拠や主張を出し合い、調停がまとまらなければ、審判が出されます。一般的には、離婚などの家事調停がよく知られていると思います。

 

もちろん、民事調停というものもあるのですが、知的財産に関する紛争は専門的知識が必要になるため、専門的知識を有する裁判官が必要になります(現に、東京地裁や大阪地裁には専門部があり、知財高裁もあります)。

例えば、特許権侵害が問題となる事件では、そもそも特許権を侵害したといえるかという点や、損害額がいくらかという点が問題になることが多いです。特に、特許権侵害の有無は、精密な文言解釈が要求されたり、技術常識が問われたりしますので、これを理解する必要があります。そのため、慣れていないとなかなか対応するのが難しい事件類型であると思います。

そこで、今回特別に専門的知識を有する調停委員が関与する知財調停手続が導入されました。

 

調停手続なので、当事者が合意すれば多様な解決方法をとることができます。

裁判の場合、「~してはならない。」といった差し止めや損害賠償を求めることになりますが、調停であれば、それだけではなく、問題となっている商品のここをどう変更したらいいとか、ホームページを変えてくれとか色々な解決方法を導くことができます。

また、裁判所を利用するための手続費用(印紙代)も少なくて済みますので、訴える側の負担も少なくなります。

 

ただ、知財調停を利用する場合、管轄合意書を提出する必要があります。

すなわち、紛争の相手方と知財調停を利用する旨を同意をする必要があります。

この点が、知財調停を利用するうえで障壁となってくると思われます。相手がすんなり合意してくれればいいですが、そうでないこともあると思いますし、こちらが裁判をしたくない理由があるのではないかと勘繰らせる可能性もあります。

この点は、今後どのように運用されていくか注目です。

 

それでも、調停手続を利用できるのは知財紛争の解決に資するものだと思いますし、

私も機会があれば利用してみたいと思います。