契約とハンコ
どうも、フリーランス弁護士です。
先日、契約における押印に関し、内閣府などが連名でQ&Aを発表しました。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00095.html
一般的に、契約を締結する際には、書面に押印します。そのため、基本的には、契約当事者が対面で契約を締結することになります。
しかし、コロナ禍においては、対面での契約が締結が難しく、押印がなくても契約が有効といえるのか疑問を持つ方が増えたのだと思います。
Q&Aにあるとおり、契約の成立には印鑑は必要ではありません。
当事者双方の意思が合致していれば、契約は成立します。そのため、口頭で合意した場合であっても、厳密には契約が成立しています。
もっとも、契約が成立していることと、契約の存在を証明できるかは別問題です。
口頭で合意しただけでは契約を証明することができないので、契約書を作成します。
押印が意味を持つのは、この契約の立証の場面です。
民事訴訟法228条4項には、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定されています(司法試験受験生が大好きな二段の推定が出てくるところです。)。ここにいう「真正に成立した」とは、当該文書に文書の名義人の意思が表現されていることをいいます。簡単に言えば、その文書が偽造されたものではないということを推定するということです。
契約書に押印があれば、法律上の規定により、その印鑑の名義人の意思で契約書が作成されたと推定されます。そのため、契約書にあらわれている合意があったということができます。
契約の立証が容易になるという意味では、押印がある方が望ましいといえます。
ちなみに、上記Q&Aでは、押印に代わる契約の立証方法として、以下のとおり例を挙げています。
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(a) メールにより契約を締結することを事前に合意した場合の当該合意の保存
(b) PDF にパスワードを設定
(c) (b)の PDF をメールで送付する際、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達
(d) 複数者宛のメール送信(担当者に加え、法務担当部長や取締役等の決裁権者を宛先に含める等)
(e) PDF を含む送信メール及びその送受信記録の長期保存
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企業の場合、契約主体は会社になるので、単に実務担当者がメールでOKしただけでは必ずしも契約が成立したといえない可能性があります(従業員が勝手に同意しただけで、代理権限がないとされる可能性があります)。
そのため、決裁権限のある人にもメールすることがポイントになると思います。