今後の主流?eスポーツ

こんにちは、フリーランス弁護士です。

コロナのせいで中止となっていたプロスポーツが解禁の兆しを見せていますが、そんな中で脚光を浴びたのがeスポーツです。先日、テニスの大坂選手や錦織選手がテニスゲームの大会に参加していたことでも話題となりました。もちろん、eスポーツの大会等が中止になるなど全く影響を受けていないわけではないですが、今後伸びていく分野ではないでしょうか。今回の記事では、自分の備忘録としての意味合いを込めて、話題のeスポーツについてまとめていきたいと思います。

 

 第1 eスポーツの定義

「eスポーツ(esports)」とは、『「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲームビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称』です(一般社団法人日本eスポーツ連合ホームページより)。端的に言えば、パソコンかゲーム機でのゲームでの成績を競うことですね。よく種目になるのは、「call of duty 」や、「ウイニングイレブン」です。ちなみに、日本eスポーツ連合が発行しているプロライセンスの対象は、8ゲームです(https://jesu.or.jp/contents/license_system/)。

この定義からもわかるようにeスポーツの必須要素としては、電子機器を用いることがあげられるため、従来の「スポーツ」とはイメージが異なります。そのため、「eスポーツ」が、これまでの「スポーツ」に含まれるかという点がよく議論されます。

「スポーツ」とは、「心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動」とされています(スポーツ基本法前文)。

 

まぁゲームをしていると楽しいことは間違いないので、「eスポーツ」により「精神的な充足感」は獲得できるでしょう(雑なあてはめ)。

 

次に問題となるのは、「eスポーツ」は、一般的な「スポーツ」とは違い、大きく体を動かしたりするものではないという点です。確かに、基本的には椅子に何時間も座っているので、走ったり誰かとボディコンタクトが生じるわけではありません。ただ、シューティングゲーム等では動体視力が要求されますし、高橋名人のような連打をすることも求められます。また、マウスを動かすスピードを上げるために筋トレをする人もいるらしいので、全く筋力が不要というわけではないようです。そういった意味では、「その他の身体活動」には該当すると思います。

これらのことからすれば、「eスポーツ」も「スポーツ」の一つといえるのではないでしょうか。

 

 第2 eスポーツの市場規模

 「eスポーツ」の市場規模は、2018年時点において約48億円となっています(https://jesu.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/document_05.pdf)。ちなみに、NPBが1973億円(2010年時点)、Jリーグが728億円(2012年時点)となっており、まだまだこれには及びません。しかし、「eスポーツを活性化させるための方策に関する検討会」の報告書によれば、2025年には600~700億円にするとの長期目標が掲げられており、今後急速に伸びていくことが予想されます。

 

 第3 eスポーツの法的問題

「eスポーツ」で問題となる法律は、①景品表示法、②刑法、③風営法があります。

①と②は、賞金提供に際して問題となる可能性があり、③はイベントを行う際に問題となる可能性があります。

 

①に関しては、賞品の上限規制に該当するのではないかという問題があります。すなわち、ゲームの購入者や課金をした人に対して賞金を出すことが、一般懸賞に該当し、10万円の上限規制にあたるのではないかという問題があります。

 

これについては、賞金はあくまでプロ選手に対する報酬であり、景品表示法の規制対象ではないと考えられています。また、この点については、消費者庁ノーアクションレターもあります(https://www.caa.go.jp/law/nal/pdf/info_nal_190903_0002.pdf)。

このことからすれば、ゲームの購入者限定の大会などでは、一般懸賞が問題となり得ると思われます。

 

 

②に関しては、昨今話題の賭博罪(刑法185条)が問題となります。これは、大会の参加者から参加料を徴収している場合に問題となりえます。

 

仮に、参加料を大会の結果次第により賞金として分配しているとなれば、「賭博」に該当します。これについては、日本eスポーツ連合のホームページに以下の記載がありました。

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①  賞金・賞品が、参加者や主催者以外の第三者(スポンサー)から提供されること

②  (大会の主催者が賞金を提供する場合であっても、)参加料が会場費やスタッフの活動費などの大会運営費用にのみ充当され、賞金・賞品に充当されていないこと

 

 そして、上記①、②を明確化するための方法としては、例えば、参加料と賞金等を口座上分別管理する、賞金等が第三者(スポンサー)から直接授与されるようにすることが考えられます。

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すなわち、参加料はあくまで実費に充当されるものであり、これを分配するものではないという立て付けにしようとするものです。これを明確に区別できるかという問題がありますが、「賭博」に該当しないよう配慮されています。

 

 

③に関しては、「eスポーツ」の大会が、ゲームセンターなどと同様に風営法の規制を受けるのではないかという問題があります。

風営法2条1項5号には、「風俗営業」として、「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの・・・を備える店舗その他これに類する区画された施設・・・において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業」が規定されています。

これに「eスポーツ」の大会が該当しうるわけです。風営法の適用対象となれば、その営業に関し、遊戯の結果に応じて賞品を提供してはならないことになりますので、大会賞品を提供することはできません(風営法23条2項)。

 

私が調べたところ、この点についての解釈指針は固まっていないように思います。そのため、今後法改正や監督官庁への照会が必要になると思われます。

 

 

 

簡単ですが、「eスポーツ」についてまとめてみました。

今後どんどん発展していくことを願っています。

 

※本記事は、個人の私見を述べたものであり、法令やその解釈適用の正確性を保証するものではございません。